Bookguide by Olivier

本の紹介をメインに日常に生かせる情報を紹介します

第9夜 『陸王』 池井戸潤

 

今回は池井戸潤の著書『陸王』について紹介します。

テレビドラマ化もされて有名な作品ですね。

読んでほしい人

この本はこのような人におすすめです!

・中小企業vs大企業のリアルな企業ドラマを見たい人

・経営者(特に中小企業)がどのような悩みを抱えているのか

ストーリー

埼玉での足袋屋「こはぜ屋」が主人公です。伝統的な足袋を中心に商売を行っている中でだんだんと業績は悪化していました。

東京に百貨店に営業に行くものの結果はあまりうまくいかず売り場面積は縮小されてしまいます。その中でたまたま見つけたのは足袋の形に似ているランニングシューズを発見します。業績向上のための新商品としてランニングシューズ開発に挑戦していくことになります。

 

当然何のノウハウもありませんが、こはぜ屋に出入りする運送業者のつてから始まり、ランニングトレーナーや教育業界などの人との縁が出てきて実際に開発は進んでいきます。そんな中で宣伝効果もかねて目を付けたのが元エリートランナーの茂木です。けがをする前まではマスコミにも騒がれていましたが、怪我をしてすべてを失って0から再出発している茂木にこはぜ屋を重ねてシューズを契約してもらうよう頼みます。

 

茂木に対しては元からスポンサードしていた大企業であるアトランティックとの仁義なき争いが繰り広げられていき、こはぜ屋のランニングシューズ開発・茂木の復活はどうなるのかというのがこの小説のメインストーリーとなります。

 

おすすめポイント

大企業と中小企業の企業ドラマ

この本の中では、どちらが茂木にシューズ提供を行うのかという点でこはぜ屋とアトランティックが争っています。この2社は非常に対極的に描かれています。

 

古き良き日本の会社で技術力や資金繰りという点では弱いこはぜ屋。

外資系の大企業でトップダウンで数字という絶対的な目標を追い求めているようなアトランティック。 

 

業界リーダーのアトランティックはチャレンジャーのこはぜ屋のやることを徹底的にまねることで資金力や技術力の差を見せつけて勝負をしようとする。このようなリアルな企業間の争いも見どころの一つです。

 

孤独な経営者と仲間とのつながり

経営者が最後は自らの意志で決断しないといけない、そのような経営者の孤独がひしひしと伝わってきます。

 

社長の宮沢は常に資金難という逆境を背負いながら、新規投資を行うのか・撤退するのかを考えさせられています。机上の空論で考えるのは楽ですが、中小企業で社員の顔がより近いからこそ社員の生活を守らなければならないという意識も強いからなおさら困難な仕事です。

 

この小説内では基本的に社長の宮沢はポンコツ寄りに描写されている気がします。だからこそ、毎回の決断の際に周りのサポートキャスト:経理であったり、銀行員であったり、ランニングトレーナーであったりに助けを求めながらなんとか進んでいきます。

最終的には一人ですべてを背負う必要はあるものの、そこに行きつくまでは支えてくれる仲間・人の縁で仕事は成り立っていると感じさせてくれます。

 

 

第8夜『天才シェフの絶対温度』 石川宅治 ~一流シェフの考え方~ 

 

今回はミシュラン3つ星シェフの米田肇さんについて書いた石川宅治の著書『天才シェフの絶対温度』について紹介します。

大阪の肥後橋にHAJIMEというレストランを経営されています。

おすすめポイント

この本はこのような人におすすめです!

・一流のシェフは何をしてそこまでたどり着いたのか

・完璧主義を突き詰めた人はどれくらいストイックなのか

・シェフの修行とは何をしているのか

シェフの修行

フレンチのシェフである米田肇さんが修行~今のお店を開くまでの半生を描いた本になります。シェフの方がどのような修行をしているのかについて書いている本は珍しい気がします。

最初はもちろん下積みからです。いきなり自分に合うレストランにあたることができれば理想的ですが、実際にはパワハラまがいのレストランにあたってしまいます。

 

当時は嫌でしかたなかったとは思いますが、あとからこうも振り返っています。

修行の仕方が全くわかってなかったんです。シェフの下で料理を習うことが修行だくらいにしか考えてなかったんでしょうね。だけどそんなことは二次的三次的なことだった。料理人の修行はシェフが何を考えているのか何を見ているのかわかるようになること。極論すればそれがすべてといってもいい。

 

将来料理長になるということを短絡的に考えるとアシスタントとしては技術を学ぶだけでもいいかもしれません。しかし、アシスタントとして求められているのは料理長のサポートをすること。そのためには、何をどのように作り上げようとしているのかという料理長の目線や考えまでを理解して動くことが求められているということに気づいたのです。

一流シェフの心構え

このことについて本書ではこのように書いてあります。

厨房の片隅でミシェルにこう言われました。『これで完璧だと思ったら、それはもう完璧ではない。この世に完璧というものはない。ただ完璧を追い求める姿勢だけがあるんだよ』って

どの分野でもトップオブトップの人の姿勢というのは共通しているなと感じました。逆に、このくらいの意識で行うことができないといこのレベルまで行くことができないということを感じました。

まとめ

・アシスタントや部下の立場で考えるべきはスキルを身に着けるということだけではなく、上司が何を考えてその行動に移したのかということまで含めて理解すること。

・完璧というのは目指す姿勢のみがあって、実際には存在しない。

第3夜『愛するということ』エーリッヒ・フロム ~愛とは技術!?~

今回はエーリッヒ・フロムというユダヤ人の哲学者の著書『愛するということ』について紹介します。

おすすめポイント

この本はこのような人におすすめです!

・愛と恋の違いを知りたい人

・学術的に愛とは何かに興味がある人

・戦争下の哲学にについて知りたい人

愛の技術について

 この本のテーマとしては愛とは技術であるということが書かれています。あまりなじみのある考えではありません。そのような人向けにこの本は書かれているのだと思います。自分は愛するということはできるのだから、あとは愛する相手がほしいなあとか愛してくれさえすれば自分はそれ以上に愛してあげるのになあとか思うのは間違いであるというのがフロムの主張です。50年以上も前に書かれた本であるのに未だに色あせていない部分も多いです。
 
まず愛と恋は違うものであるというのが前提として存在します。愛とは続けるものであり、恋とは落ちるものである。そのなかで愛についての考察が初めに書いてある。その後恋人・家族などの対象別に記述があり、最後には愛という技術の修練について書いてあります。この本は人生経験によっても感じることが違う本だと思います。結婚しているのか、上司なのか、部下なのか・・・。そのため誰が読むかによって感想は変わると思います。それでも若く人生経験の浅い人にとっても一回は愛について考えることは有用なのかなと思います。

愛とは特定の人間に対する関係ではいない。愛の一つの「対象」にたいしてではなく、世界全体にたいして人がどうかかわるかを決定する態度・性格の方向性のことである。
 (76頁)

この考えなどは一般的な愛の考えとは異なっているためなじみにくいものの代表的なものではないだろうか。

他にもこのような一節もある。

“あらゆる形の愛に共通して、かならずいくつかの基本的な要素が見られるという事実にも、愛の能動的性質があらわれている。その要素とは、配慮、責任、尊重、知である。
(48頁)“

このなかに知というものがあるが、知識とか知恵といった意味の知ではない。相手のことを知るという意味の知である。どのようなタイプの愛であれ、相手のことはもうすでに知っていると過信することは多いです。恋人同士であれ、夫婦であれ、上司と部下の関係であれ。ここで、愛の能動的な性質として知があげられていることを考えると、もっと積極的に相手のことを知ろうとしなければならない。自分はすでに相手のことをすべて理解しているといった傲慢さを持ってはいけないというのがフロムのメッセージとしてあります。

 

フロムはユダヤ人であり、この本が書かれているのは第2次世界大戦前後です。そのため、神との愛に関して記述されていることは少々日本人の考えから外れていて理解しにくいところも多いです。明日どうなるかもわからない中で愛するという覚悟を決めるということが直接的に下記のように書かれている。

“愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである。愛とは信念の行為であり、わずかな信念しか持っていない人は、わずかしか愛することができない。
(190頁)“

まとめ

・愛とは覚悟を持って、相手を思いやり続けるということである。

・その中で見返りを期待するものではない。

 

第7夜 『予想通りに不合理』 ~人間は合理的に選択できるのか~ 

今回は行動経済学者のダン・アリエリーの著書『予想通りに不合理』について紹介します。

おすすめポイント

この本はこのような人におすすめです!

・合理的に選択・行動できているという自信がある人

・なんであんなことしたのだろうと選択に後悔しがちな人

行動経済学に興味がある人

行動経済学の面白さ

行動経済学という分野をご存じでしょうか。経済学というと数式を駆使するマクロ経済学ミクロ経済学が一般的ですが、それとはある意味対極にある学問です。

前者は人間は合理的に行動するはずだから、それを前提に理論を組み立てています。神の見えざる手などは典型的です。

一方行動経済学は、人間の行動は本当に合理的なの?という部分に着目している学問です。実験を中心としていてもう少しとっつきやすいテーマが多いです。

 

本書はそんな行動経済学について読み物形式で内容を説明している本です。

面白いと思ったエピソードを一部紹介します。

 

友人や知人のためにあることをやってあげたり助けたりということはよくあります。対価をもらわなくても、友達のためと思ってやってあげることは気分のいいことであります。

では、それに対して対価をもらうとどう思うでしょうか?お金のためにやったのではないのに・・・という感情がわいてくるかもしれません。"合理的"に考えると、お金をもらえるほうが勿論いいのにです。

このことについて本書ではこのように書いてあります。

わたしたちは二つの世界に住んでいる。一方は社会的交流の特徴をもち、もう一方は市場的交流の特徴を持つ。

いわれてみれば当たり前のような気もしますが、納得感のある説明です。そのように思えることを学問として説いているのが行動経済学です。

まとめ

・人間は合理的に選択していると思っていることでも実際にはそうではないことも多い。

・合理的に考えることができないということを認めたうえで、自分の選択を見つめなおすということが大切だ。

 

第6夜『だから僕は練習する』 和田毅 ~球界の練習王の考え方~ 

今回は福岡ソフトバンクホークス所属の和田投手の著書『だから僕は練習する』について紹介します。

おすすめポイント

この本はこのような人におすすめです! ・自分には才能がないと思い悩んでいる人 ・一流のスポーツ選手が何を考えて日々過ごしているのか知りたい人 ・野球が好きな人

本の内容

著者の和田投手は日本・アメリカのプロ野球で活躍している日本を代表する投手の一人です。 彼はいったいどのように考え今まで練習を行ったり試合に登板してきたのでしょうか。 プロ野球選手のエースというと、自信家なイメージがありますが和田投手はそのようなタイプではありません。 どちらかというと周りに対して謙虚で冷静に自分を見つめて、それに対して練習を塗り重ねて自分自身を作っています。 それを表しているのが下記文です。

僕の練習へのモチベーションを支える2つ目の要素は喪失に対する恐怖感だ

プロ野球界随一の練習量を誇る彼のモチベーションの源泉が恐怖感というのは意外ではないでしょうか。

まとめ

・まわりに対して劣等感を感じるときには、"自分"という作品を人為的に作り上げる だから僕は練習する 天才たちに近づくための挑戦 [ 和田 毅 ] - 楽天ブックス
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